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前に進むということについて

公開日:2022年03月13日

個人

前に進むということ

「前に進むために理由が必要なら怒りであれなんであれ命にふさわしい」とamazarashiが歌っている。 僕にとって前に進むということは、例えば、どうにもならないことを考えることを辞めること。

前に進むということ

前に進むということを考えるにあたって、僕はまず僕がどうやって歩いているのかを考える。 僕は後ろ向きで歩いている。 つまり常に過去を振り返りながら生きている。 未来のことなど考えたこともない。 僕にとって過去は、思い出はとても残酷で僕を傷つけることはあっても、何も与えてはくれない。 なのに何故過去を見つめ続けるのか。 それがあまりにも美しいからである。 美しい思い出があまりに増えすぎて僕はもう前を向けない。 持っていける荷物には限りがある。 僕はこれ以上何も捨てられない。 ただ一つ一番欲しかったものが思い出になってしまったから。 あとは本当にもう思い出に浸りながら生きていくしかない。

踊るということ

「ダンス・ダンス・ダンス」を読んでいる間、僕は踊り続けていた。 ただ踊り続けていた。 ただ時計の針を進めるために本を読み、仕事をして、音楽を作り、詩を書いた。 傷ついた僕はそのまま踊り続け、程度がわからなくなり、心療内科に行って双極性障害と診断されかけた。 そこで僕は「ダンス・ダンス・ダンス」を読み終え、思った。 前に進むべきだ、と。 僕はよく踊った。 前に進むべき時が来たんだと。 躁状態のせいもあったかもしれないが、悲しい気持ちは徐々に収まっていた。 今まで脳内に再生され続け、自分を鼓舞し続けていた「踊り続けるんだ」という言葉が今度は「前に進むんだ」に変わった。 僕は前に進み出した。 人に会い始めた。 僕が愛さなければ、深い関係にならなければ、人はみんな優しい。 近づかなれければ離れて行ってしまうこともない。 傷ついて、踊り続けて、壊れてしまったものが沢山あるように思う。 誰かのせいにしたいし誰かを責めたいが、自分で決めたことだからそれを誰かのせいにするのは間違っていると思う。 今は薬を使って少し逃げているが、この痛みはちゃんと僕のものだ。わかってる。 誰にも渡したりしない。 前に進むしかないんだ。 踊るのとどう違うかと言われるとわからない。 わからないけれど、前に進むしかないと思う。 例えばいろんな女の子とデートしてみるのも良い。 僕の壊れてしまった部分を愛してくれる人を探してみる。 僕は今まで空いた穴を埋めてくれる人を探していた。 でもそれは間違いだった。 空いている穴は自分で埋めなければならないんだ。 人にはそれぞれ大なり小なり欠けているところがある。 僕の欠けているところは、自分を維持する上で欠けてはいけないものだった。 それを誰かに埋めて欲しかった。 でもそれが欠けているから僕は僕でいることが出来たようにも思う。 強い劣等感、低い自尊心、卑屈な心、そういうものが僕を作り上げ、ここまで運んできた。 でも僕は僕を辞めたかったから、幸せになって僕を辞められるならそれでも良かった。 足りない分の代償として努力するのではなくて、失った分が報われるように努力するのではなくて、誰かを、もしかしたら自分を純粋に幸せにするために努力できるようになりたかった。 でもそういうのは誰かに縋るようなものではなかった。 自分で補完しなきゃいけないんだ。 人にはそれぞれ大なり小なり欠けているところがあると言った。 それを誰かと補い合って暮らす人生は、おそらくとても美しい。 でも僕の欠けているところは、誰かに埋めてもらえるようなものじゃなかったんだ。 僕を頼ってくれないあの子を僕が救えなかったように、僕が直せない僕を他の誰かが直せるわけがないんだ。 それにここまで壊れてしまっていたら誰も愛してはくれない。 そういう類の穴が僕には空いている。 僕は踊るのを辞めて、前に進まなければならない。

前に進むということと踊るということ

踊るということと前に進むことの違いが少しわかってきた気がする。 踊るというのは、先ほども書いた通り、ただ時計の針を進めるために本を読み、仕事をして、音楽を作り、詩を書くようなことだ。 つまり、どこにも移動していない状態だ。 でも「何か」をしている。 音楽が鳴っているから僕はそれに合わせて踊っているというだけではある。 音楽は仕事の依頼だったり、創作意欲だったり、衝動だったり、意思だったりする。 僕はただそれに従ってなるべくうまく踊った。 では、前に進むというのはどういうことか。 端的に言えば移動するということである。 問題と向き合うこと。 問題を解決出来ると思われる方向に進んでみること。 それが前に進むことだ。 例えば僕が僕の穴を埋めるのに、ただ仕事をして曲を書いて詩を書いて本を読んでも意味がない。 まず穴を認識することが重要だ。 穴の深さ、大きさ、形。 そういう調査が必要だ。 それをした上で曲を書いて誰かに認めてもらえれば埋まるのか、詩を書いて自分で満足すれば埋まるのか、本を読んで言葉に救われて埋まるのか。 それを考えて効果がありそうだ、となってからそれらをすることには意味がある。 ただやるだけでは踊るのと同じだ。 別に音楽が鳴っているから踊るっていうことは悪いことじゃなかった。 リハビリになったし、逃げることにもなった。 でも一生それをしていてはなんの解決にもならないし、本当に僕は壊れてしまう。 だから僕は前に進まなければならない。 方向をしっかりと見定めて。 道は一つじゃないし、合っているかは正直行ってみないとわからない。 でも一つ一つ判断して選択しないといけない。 前に進むっていうのはそういうことだ。 僕は前に進もうと思う。